黒いネイルに散るラインストーンがぎらりと光る。

「最初から知ってたよ。こんな季節にまだブレザー着てる人なんてあんまいないし、それに…」


にやり吊り上がった唇からそっと溢れてくる、俺を突き刺す言葉たち。

「リーチは、見下してる人に従ったりなんてしないでしょ」

「―――」


本当にその通りだった。

普通科はもちろん教師も世間も見下している俺が大人しく校則に従うなんてあり得ない。


自分でわかっている分にはまだいい。

だけど、だけど、それをどうしてこんな奴に言われなくちゃいけない。


湧き上がる苛立ちは止まる所を知らず、かと言って感情のまま思いをぶちまけることもできず。

きっとこのうっとうしい気持ちも、時間が経てばいつの間にか消えて無くなってしまうのだろう。


「安心しなよ。Tシャツのこともピアスのことも、誰にも言わないからさ」

その上から目線がムカついて、どうしても優位に立ちたくて。


「…っクラスでシカトされてる奴が、偉そうに言うな」

最低な言葉がひとつだけ、明らかな悪意を持って奏のもとに向かっていった。