慌てて一歩後ろに引いたものの、奏の目を見たらもう遅かったことがわかる。
獲物を捕えた妖艶な笑み。
「リーチだって、不良なくせに」
再び詰め寄られて耳にかかっていた髪を掻き上げられる。
「やめろ!」
どうしよう、見られた、見られた。
――校則第4条:カッターシャツの下には目立たない、華美でない下着を着用すること。
ブレザーに隠れた俺のカッターシャツの下にあったのは、赤い派手なTシャツ。
――校則第7条:ピアス・ネックレスなどの装飾品の着用は不可とする。
耳にかけた髪の下から覗くのは、目立たなくとも確かな輝きを放つシルバーのピアス。
見られた――。


