周りの人の、流れ…?

辺りを見回してみたものの、彼の言う意味は微塵もわからなかった。


首を傾げたまま窓の外を見ると、カフェオレ色の派手な頭が目に入る。

隣にいるのはあちこちに色とりどりのメッシュを入れた同じく派手な頭。

「あれが彼氏か…」

「何か言ったかい?」

「いえ、何でもないです」


彼の問いかけを無かったことにし、俺は再び廊下の人の流れに視線を戻した。


――ねぇ、今日カラオケ行く?

――なぁなぁ、ボーリング行こーぜ。

――あそこに雑貨屋出来たんだってさ。


雑踏の中に混じる楽しげな会話。
音楽家ではほとんど交わされることの無い、けれど普通科の生徒にとってはごくごく普通の会話。


「…うっとうしい、です」

気付けばそんな言葉がこぼれていた。