沈黙を了承と受け取ったらしい。

彼は途端に表情を緩め、俺の腕を引っ張った。


「え、ちょ…?」

てっきり第1音楽室の方に向かうと思ったのに。

そっちは普通科の棟――。


引きずられるように足を進めながら、思わず訊ねてしまう。

だってそれは、訊ねずにはいられないこと。

「先生、どうしてこっちに?第1音楽室はあっちですよ」

「はは。君は本当に真面目だな」


そして急に普通科棟の廊下の真ん中で立ち止まったかと思うと、こちらを振り返った。

窓から横向きに差しこむ光が彼の髪に反射して俺の目を灼く。


「見てみなよ、周りの人の流れを」