華やかな外見もそのピアノの腕前も、自ら表へ出ようとしない謙虚と言われる態度も全部。

俺たちへの当てつけにしか思えない。


自分は見た目がいいから、ピアノが上手いから、表に出なくても注目されるんだと言われているようで。

わかってる、本当はこんなことを考えるべきじゃないって。

思えば思うほど自分は嫌な奴になっていくって。


だけどどうやっても拭えない、劣等感。

だからこの人に教えてもらうなんてまっぴらだった。

「北浜くんはいつも一人で練習してるよね?」

「え?あぁ、はい」

親指と人差し指を悩ましげに顎に添えた彼は、次にとんでもない言葉を繰り出した。


「もしかしたらそれに原因があるのかもしれない。よければ僕と一緒に練習しないか?」

呆れて声も出なかった。

何だって?