コンクールまで3カ月を切っている。
普通ならもう演奏曲の仕上げにかかっていてもいいはずだ。

なのに俺は仕上げにかかるどころか、演奏のやり方すら思い出せない。

演奏に楽しさや充実感を見いだせないまま立ち止まって、普通科のこんな奴にも説教される始末だ。


「普通科だって充分キツいよ?大学行くために必死になって勉強しなきゃいけないしさ。リーチは普通科の苦労なんてわかんないでしょ」

「奏は勉強なんてまともにしてないだろ」

見かけからしてそれはわかるし、合唱の追試だってデートなんて名目でサボったんだ。

…違う、こんな風に論点をずらしたいわけじゃない。


第一、こうやって話を逸らすということは負けを認めたも同然じゃないか。

「アタシはそーだけどさ。でも音楽科は勉強なんてしなくっても楽器弾いてればいいんだもんね、楽じゃん」


バカか、と叫びそうになった。

特技一本で進学も将来も決まる、こんな苦しい道なんて無い。