「…お前に、何がわかるんだよ」

力いっぱい睨みつけると、大量の付けまつ毛に隠れた奥の瞳が少し怯んだ。

「普通科なんて音楽科の苦労を何も知らないくせに、勝手なこと言うな」


普通科相手に労力を使えるほど、音楽科は暇じゃない。

今だってコンクールに向けて刻一刻と時間が過ぎて行ってるところなんだ。

本来なら、こんな風に遊んでる場合じゃないんだ。


「てか、そーゆー風に考えること自体、ダメじゃね?」

互いの顔が近づく。
吐息がかかりそうなほど。

「音楽科とか普通科とか、関係ないし。観客は観客でしょ。で、観客に精一杯の演奏をするのがピアニストってもんじゃないの」

「うるさい。お前らみたいにお気楽に過ごしてる普通科連中にはわかんねぇよ」


こんな、俺の苦しみなんて。