「顔も悪くないし、何より実力がある。泉水先生は確かにカッコいいけど教師だし、リーチの方が手が届く場所にいるから」

褒めているのかけなしているのか判断しにくい実に微妙な言葉で、奏が俺の評価を語る。

「普通科にも、リーチが好きって子はいっぱいいるの。北浜くんカッコいいって言ってる子も、たくさんいる」

スローモーションのような動きで奏が俺の腕に体を寄せてくる。

誘惑するようなその仕草の真意は、あの雨の日と同じなのだろうか。


「だけどリーチの側にアタシがいるだけで、評価はどんどん下がってく。そんな人だと思わなかったとか、結構チャラいんだとか。…それが、許せない」

俺の腕を掴む指に少しずつ力が加わる。
痛いとはとても言えなかった。

必死で助けを求める顔つきだった。

泣きそうなのを我慢して、叫び出したいのを懸命にこらえて。

こいつが結構泣き虫だなんてことも、こうやって関わらなければ知らないままだった。


「アタシのせいでみんながリーチから離れていくのに、アタシはまだリーチの側から離れられない…っ」

早く離れた方が、リーチにとっていいことなのに。


そう呟いたかと思うと、彼女は火が付いたように泣き出した。