いつもなら射抜くように俺を見つめてくる視線がふらふらとさまよう。

これが終わりになるのか始まりになるのか、決めるのはきっと彼女じゃない。


「中庭で泣いた日、あったじゃん。あの時泣いてたのは、フラれたからじゃないよ」

以前タカと話した内容が頭をもたげる。

だけどあれはどう考えたって嘘泣きなんかじゃなかった。

いつも強がってばかりの奏が初めて俺の前で涙を見せた、あの日の曇り空や頬を打つ雨。

それらが全部そこにあるようにはっきりと思い出せる。


けれどそう言ったきり、奏は次の言葉を繋ごうとはしなかった。

不思議に思って首を傾げると、観念したようにその唇から言葉がこぼれる。


「リーチ、タカとしゃべったでしょう?言わなきゃって思ってた。あの時アタシはタカにフラれたんじゃない。自分からタカに別れてって頼んだの」


どうして?
その声は出てこなかった。

それを言ってしまえばすべてが終わりだと思った。