本当はこんなの、性に合わない。

歯の浮くような優しいセリフなんて俺が言っても白々しく聞こえるだけだから。


だけど心の底から思ってることなら、言ったって白々しくはならないだろう?

「本当だ。もっと早く言ってくれればよかったんだ」

「へ?」


裏返ったおかしな声を上げて駒田が顔を上げる。

驚きで見開かれた目には、許容量いっぱいの涙が溜まっていた。


「もう少しでも早く言ってくれたらこんなに驚かなかったかもしれないし、泉水先生に勝てるぐらいの演奏ができたかもな!」

怒っているように語尾を強めたのはわざとだ。

そうして困ればいい、早く打ち明けなかったことを後悔すればいい。


俺だって、これまで何も言ってくれなかったことに少なからずショックを受けてはいるんだ。

「ご、ごめん、俺そんなこと全然考えてなくて」

無言で笑えば充分だと思った。
それだけで伝わると思った。


「友逹」なんて恥ずかしい言葉で確かめたことは無いけれど、駒田と友逹になれてよかった。