「とてもよかったよ。何度か耳にしたことはあるけれど、今回の演奏が一番君らしかった」

最初の空白時間が長くなければもっとよかったね。

そう言って彼が豪快に笑う。


「あの子とも仲良くしてくれたようで、ありがとう」

バスキーに渡されたトロフィーは眩しすぎる銀色以上の輝きを放っていた。

今俺の手にふさわしいものはこれなんだろうと思わせる輝きだった。



表彰が終わり俺が真っ先に駆けつけたのは、母さんでも奏の所でもなく所在なげに佇む駒田の所だ。

「駒田!」

それほど大きくはない声なのに、ホールの反響力が俺の声を何倍にも拡張してくれる。


スポンジケーキのように、ひよこのようにふわふわと緩くカールを描く髪。
森の陰に潜むような深い緑の色。

それが誰に似ているものなのか、俺はもう知っている。