この曲は元々バッハが礼拝時の合唱曲として創り出したものだ。
それゆえに感情に任せた激しい響きはほとんど無く、神を敬愛する気持ちに満ちた柔らかく優しい響きが主となっている。
さらに合唱曲の伴奏として、歌う者をまさに神の視点から見守るようなあたたかさも忘れてはならない。
弾くだけで優しい気持ちになれる、今でも多くの人々に愛される曲。
バッハが頭の中で思い描いた「神」の姿がここにはある。
テンポも遅く簡単なように思えるけれど、速い曲と違ってその中の一音一音に丁寧に想いを米無ければならない。
ゆっくりだからこそそこに込める情感がおろそかになった時、それが浮き彫りになる。
バスキーの演奏にはまだまだ届かない。
泉水先生の演奏にだってちっとも追いつけていない。
だからここがスタートだ。
ここから俺は強くなる。
そうやって前向きに考えることを教えてくれた人がいるんだ。
終わりに近づくにつれて音はより小さくなり、響きはさらに柔らかくなる。
そして最後の一音が、終わる。


