俺のくだらない気持ちが伝わったのかはしらないが、駒田が笑みを崩すことなく言う。

「コンクール、2ヶ月後だったよね。俺も聴きに行っていいかな?」

「もちろん。それまでには形にできるよう頑張るよ」


あんなに上手なチューバ奏者が俺の演奏を聴きに来るのか。
そのことに多少の戸惑いはあったけれど、心は笑いだしたくなるぐらい落ちつき払っていた。

笑っている場合じゃないだろうに、思う。


形にする?
違うよ、完璧にしてやる。

あの曲の良さも俺の気持ちもすべて音に吹き込んで、審査員が何も言えなくなるぐらい。

そういう気持ちで2ヶ月を過ごすよ。


コンクールが終わったら会いたい人、聞きたいことがたくさんあるんだ。

俺のピアノで笑顔にしたい人がいるんだ。