「自由曲は何にしたの?」
首を傾げて問う駒田に自由曲のタイトルを告げると、彼は目を丸くしてしつこいぐらいに瞬きを繰り返した。
その顔が驚きを語っている。
「…それはまた、随分難しい曲を選ぶんだね」
そうか、こいつはこの曲を「難しい」と言うのか。
そのセンスも悪くないと思った。
「あぁ、だからこうやって授業中も練習してないと心が休まらないんだ」
このコンクールがすぐに将来に繋がるとは思えない。
もっともっと数と功績を重ねないと、到底目指す所には届かないだろう。
子どもの他愛ない夢だとわかっていても、それを求め続けちゃいけないか。
泉水先生や、バスキーに追いつきたいと思うことは罪なのか。
近づきたいんだよ、無理だってわかってても追い越したいんだよ。
夢ぐらい見たっていいだろう。
ぼやき続けていたら、いつか現実になってくれそうな気がするんだ。


