明日探し出すことができたら、何から訊ねよう。

そう思いながら校門に近づいた所でついさっきも見たのと同じ配色の頭髪が目に入る。

けれど今度のものはさっきよりもっと長い。


「奏」

ずっとケータイをいじっていた手元が止まり、奏が顔を上げる。

相変わらず付けまつ毛がバサバサの、瞬きするだけで風圧が生じそうな目で。


「誰か待ってるのか?」

「あー、そう。歌花が委員会だっていうから、途中まで帰ろうと思って待ってる」

待つんだったらエアコンの効いている教室の方がいいはずだ。

普通科の生徒が音楽科棟までやって来るのはとても目立つ。


だからここで待っていたのかと、自惚れてもいいのかと口に出しそうになった。

「き、聞きたいことがあるんだ」

一気に言おうと思っていたのに、声がわずかに震えて舌が絡まる。


それまで無表情だった奏の口元に小さな笑みが浮かんだ。