やっぱり見間違いなんかじゃなかった。

その髪の色も、高い背丈も、あの日見たものとあまりにも似過ぎていた。


「あんたが、“タカ”か…」


――結局体が目当てだったのかって、思っちゃうよね。

彼女の弱々しい声は今も鼓膜に残っている。

あの涙も、まだ網膜から離れない。

俺を無理やり押し倒そうとした、気丈な「フリ」だって全部。


全部、忘れていない。

「奏と仲良くやってんの?それとももう飽きて捨てちゃった?音楽科でも有名なキタハマクンなら引く手数多なんだろ?」

「は…?」

奏のぞんざいな扱いにも腹が立ったけれど、それ以上にそいつの言っている意味がわからなかった。


「ん?だって奏ってアンタが好きなんだろ?」

「――え…?」