コンクールまであと2ヶ月を過ぎた。

ケータイの待ち受け画面に表示される日付は刻々と変わって行くのに、その中で俺だけが変わらない。


いつも嫌になるぐらい触れていた鍵盤は、授業の時にしか触れなくなった。

自主練習も一切なし。

最初のうちは指摘して俺を正そうとしてくれた先生たちは、もう諦めたのか何も言わない。


音楽へ近づく勇気を無くした俺は、下手になっていく一方だった。


あの日から奏とは一度も会っていない。
もともと音楽科と普通科では棟が違うし、すれ違うことすらなかった。

最初のうちこそ自分のピアノの腕がどんどん劣化していくのが怖かったけれど、1ヶ月も経った今ではもう慣れてしまった。


1ヶ月前と比べて、今日の俺はものすごく下手だった。

明日はもっと1ヶ月前の俺から遠ざかる。

きっとそのうちピアノに触れることもできなくなって、そうなったら俺は学校を辞めるしかなくなるんだろう。


1ヶ月近く放っておかれた我が家のグランドピアノは、寂しく薄っすらと埃をかぶっていた。