有無を言わさず矢継ぎ早に飛び出す言葉に何も言えないまま、俺は駒田に引きずられるようにして再び校門をくぐった。
今にも逃げ出したい気持ちでいると、駒田が首を傾げながら言った。
「今日はあの子と一緒じゃないんだね?」
その言葉が俺をその場に、標本のように貼りつける。
けれどここまで個人的なことを駒田に話すのも何か違う気がして、俺は冷静なフリをしてみせた。
「…あぁ、奏のことか」
「奏ちゃんて言うの?北浜くんって普通科の人とも仲いいんだね。俺は音楽科にもあんまり友達がいないぐらいだからなぁ」
「え、そう…なのか?」
「寂しいことにね」
それはとても意外だった。
駒田は人懐こい性格だし、明るいから誰とでも仲良くなれる人だと思っていたのに。
それともみんな自分のことに夢中になるばかりで、友達なんて作る暇も無いのだろうか。


