つられて俺の口からも飛び出した、か細い弱音。
「…奏」
『なにさ』
耳を澄ませば隣の部屋から聞こえてくる微かな笑い声。
あの人を隣に置きたいと、どうしてもっと早く願えなかったのだろう。
そうすれば今、俺とこうして電話をしていたのはあの人だったかもしれないのに。
「明日の朝、早起きできるか」
電話の向こうで、怪訝な沈黙が流れる。
『頑張ったらできる、かも…。わかんないけど』
始業時間は朝の8時半。
放課後になってしまえば、いい加減俺も真面目に自由曲を決めなくてはならない。
練習時間を削ることなく相談ができるのは早朝の始業前しかなかった。
「明日の朝7時、中庭で」


