そして彼女が言った「トモ」という人物の名前に心当たりがなく、一瞬思考が停止した。
けれどすぐに思い浮かぶ人がいた。
…あぁ、駒田のことか。
確か下の名前は伴鳴だったな。
「あのなぁ、そういうの犯罪って言うんだぞ」
『え、別によくない?だってアタシら友達じゃんね』
奏から初めて聞かされたその単語に、わけがわからなくなる。
「俺たちって、友達だったのか」
初対面であれだけ毒を吐き、互いに罵り合って、そういうのが友達なのか?
俺はピアノにばかりかまけていたから、友達というものの定義がいまいちはっきり掴めない。
もっとお互いに高め合って、笑い合って、励まし合って…。
そういうものだけが、友達だと思っていた。
…あれ?
「なぁ、奏」
『んー?』


