その時、鞄の奥にしまっていたケータイが突然震え始めた。
ディスプレイに表示されたのは初めて見る知らない番号。
もしかしたら誰かの番号を登録し忘れたのかもしれないと思って、それを耳に押し当てる。
「はい」
『やっほぅ、リーチ』
「…は?」
しばらく口をぽかんと開けたまま動けずにいると、電話の向こうでけらけらとうるさい笑い声が聞こえた。
あいつには間違いない。
けれど俺はあいつにケータイの番号なんて教えた覚えはなかった。
『あはは、驚いたぁ?』
「なんでお前、俺の番号…」
『え?リーチがトモと練習してる時に赤外線通信した』
小さく舌打ちが漏れる。
余計なことを。


