木漏れ日から見詰めて

 開いていた窓を閉めようとアルミサッシの枠を手で掴んだ。

 重なり合う緑色の葉の隙間から学校の教室が見えた。

 白髪頭で度のきつそうなメガネをかけた中年男性の教師が片手で教科書を持ちながら教室の後ろへ歩いていく。

 紺野さんと菱沼先生はこの窓から目で会話していたのだろうか?

 確かめる方法がひとつだけある。

 これから教職員専用の玄関で待ち伏せして紺野さんが倒れたことを伝えれば、菱沼先生の反応で2人の関係がはっきりする。

 なにも言わず病院へまっしぐらに向かえば学校の隣で紺野さんが暮らしていたことは知ってるはず。

“どうしてこの町に紺野さんが?”などと疑問符をつければ紺野さんのことは菱沼先生の心に存在していなかったことになる。

 ぼくは菱沼先生に会うために紺野さんの部屋を出た。

        <了>