暗がりの夜だから



「やめてよっ!…」

私は捕まれそうになった腕を寸前で引っ込め、おじさんに背を向け走り出した。

無我夢中で、全速力で。

後ろでおじさんの叫び声がする。

私を呼び止めてる…?

「っ…怖い怖い怖い…」

頬に伝わる涙の雫が、風に飛ばされ散ってゆく。