問題山積み

それに、さっきまで男の格好していた私には、赤やら白やらを着るだけの切り替えスイッチはついていない。
支度が済んで、携帯をチェックする。
彼女の澪(れい)から、メールが来ていた。
受信したのはつい5分くらい前。


『碧、今日仕事が終わったらうちに来てよ』


澪の家は、池袋から電車で5分ほど。
仕事上がりで終電を逃しても、タクシーで行ける距離。
だから私はしょっちゅう澪の家に泊まりに行っている。
とは言え、今日行くのはちょっと気乗りしない。
何故なら、今日はお客に会ったから。
私の仕事を澪は知っているが、理解しているわけじゃない。
びっくりするくらい嫉妬するんだ。
だから最近は仕事をしたことを黙っているし、澪が勘繰って来ても上手くごまかす。
疚しいことなんて、何一つとしてないのに。
それに、澪の前ではかっこいい自分でいたいから。
キャバ嬢の後にもう一度男の子になる自信のない、切り替えられない私にとっては、そこが悩みの種ってこと。