せらは、地面にソッと降ろされたが腰が抜けたように、その場に座りこんだ。

「大丈夫か?」
金髪の先輩は、せらの顔を除き込んだ。

せらは、視界に金髪の先輩の顔が見えると目を合わせることが出来ずに顔を背けた。

「怖がらせたなら、悪かった。」
金髪の先輩は、そう言うと落ちていた鞄を拾い去ろうとした。

せらは、慌てて金髪の先輩の袖を掴んだ。

「んっ?」
金髪の先輩は、振り返った。

せらと金髪の先輩は、ちょっとの間見つめあった。
せらは、思わず掴んでしまったが何を言ったらいいのか、上手く言葉が出てこなかった。

「…あ、ありがとうございます 。」
勇気を振り絞ったが聞き取りにくいほどの小さな声でせらは言った。

辺りが静まり返っていたせいか、金髪の先輩の耳には、せらの小さな声が聞き取れた。

金髪の先輩は、ニコッと笑うとせらが掴んでいる袖とは反対の手でせらの手首を掴んだ。

せらは、ドキッとした。

金髪の先輩は、また軽々とせらの手首を引っ張った。
せらの体は、またフワッと宙に浮くように立ち上がった。

せらは、今まで金髪の先輩の目を見ることが出来なかったのに、今は逆に目を反らすことが出来なくなっていた。

金髪の先輩もなぜか見つめてくるので、二人の間に甘いムードが漂っていた。

「もう暗いから、送っていく。家どこ?」
金髪の先輩は、口を開いた。

「あっ、三本橋の近くです。」

三本橋とは、学校からそう遠くない近くの橋である。

金髪の先輩は、なぜかそのまませらの手首を掴んだまま、三本橋の方向に歩き始めた。

せらは、動揺した。
引っ張られるがまま歩いてはいたが、まるで自分の足ではないかのように知らない間に足が勝手に動いていた。

せらは、ふと金髪の先輩の背中に目をやった。なぜか懐かしい気持ちになり、知らない間にもう一つの手が金髪の先輩の背中を触っていた。

「何?」金髪の先輩は、立ち止まり振り返った。

せらは、自分のした行動にハッとなり、慌てて手を引っ込めた。

「すみません、何でもないです。」
せらは、顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。

それでも金髪の先輩は、静かにせらを見つめた。

そして、せらの頬にソッと手で触れた。