「あの…虎様。角がありませんが、どこかに落とされたのですか?」

セラは、そわそわしながら、床を見渡した。

「角?なんだそりゃ?」

「えっ?!頭の上に角がありませんけど…。」


虎は、大笑いをした。
「あったりめぇだろ。俺が怖そうなやつだからって鬼なわけないだろ。」

虎は、笑いが止まらないまま喋った。

セラは、驚いて言葉を無くした。鬼では、なかったら虎は何者なのか。
そして、考えた。今まさに自分がいる場所は、鬼の国ではないのでは。


「セラって言ったな。セラは、いくつだ?鬼って言うのはな、昔話の作り話だぜ。」

虎は、笑いが収まるにつれて喋った。

「…15です。それに作り話ではありません。現に私は、鬼です!」

セラは、少し声を張り上げて言った。
しかし、また虎は笑い出した。

「なぜ、笑うのです?!」
セラは、少し怒り気味の声で言った。

「すまん、すまん。だが、信じてやりたいが15とは、まだ子供だな。なぜ、自分を鬼だと言うのだ?セラは、鬼には見えんぞ。優しそうに見える。」

「…子供では、ありません。虎様が思う鬼は、怖いのですか?虎様は、鬼ではなく、何なのですか?」
虎は、セラの純粋な質問にセラが嘘をついている様子が感じなかった。

「まぁ、昔話では鬼って言うのは悪さばかりする話が多いぜ。俺は、人間だ。てか、本当に鬼なのか?」


セラは、悲しくなり泣き出した。

「鬼にも、いろんな鬼はいますが決して悪さをするなどあり得ません。酷いです。」

「いや、すまん!昔の作り話だ。気にするなよ!」
虎は、おどおどして持っていたボロボロの布をセラに渡した。
セラは、その布で涙を拭いた。

「虎様は、お優しいのですね。」

虎は、言われ慣れない言葉に照れた。