「他にも色々聞いたぞ~?」男は楽しそうに笑って手帳をめくった。


「身長175cm。体重56Kg。お前もっと食った方がいいんじゃね?そんなんだから中途半端な背なんだよ。ま、抱きかかえるのは楽だったけどな~」


うるさい。中途半端で悪かったな。あんたが無駄にでかいんだろ。


ってか抱きかかえられたのかよ…俺。


「ついでに言うとうお座のA型。あ~そんな感じ♪なんかいかにも堅実そうで真面目だもんなぁ」


余計なお世話だ。ってか星座と血液型で人格決めんな!


「四年付き合った“ヒナ”とは社内恋愛。隣の課で、彼女が異動してきたときの歓迎会で意気投合。ふむふむ、ありがちだな。手ごろなところで手を打ったって感じか」


ありがちで悪かったな。手ごろな女と四年間も付き合わねぇよ。


「夢は一戸建てマイホームに子供二人と奥さん。家族四人で暮らすこと?小せぇな」


それだけ言うと男は手帳を閉じた。


「いちいち俺のプロフィールに突っ込みをいれるじゃねぇ!大体その手帳は何なんだ!!それにあんたこそ何してるヤツなんだよ」


一気に言いたいことを喚いて俺は肩で息をした。


男は「ふん」と鼻を鳴らすと、


「この手帳は俺の情報収集手帳だ。気になるヤツが居たらそいつのことをとことんまで知りたくなるのはたちでね。


それで二つ目の質問だが。職業はホストだ。おっと、現役じゃなくて経営の方ね」


ホスト……胡散臭い職業だが、何かこいつにはお似合いな気がする。


そんなことを考えてると、何を思ったのか男はおもむろに髪を掻きあげた。


「俺様の美貌を生かすのにもってこいの職業だろ?」


なんてさらりと言われて、


「あ……はい…」


呆然と答えるしかなかった。