『ふざけんな…。あたしはあんたの
 オモチャじゃない…!』



刃先を自分の方に向け、
一突きに深く心臓めがけて
振り下ろすと
ザクッと鈍い音がした。



床にポタポタと流れ落ちる血液。



歪む郷田の顔。



刺さる寸前で
刃を自ら素手で握りしめて
食い止めている。
互いに力尽きるまで緩めない。



やがて、手のひらに食い込んだ
傷跡から大量の血液が流れ落ちてる。



『離さないとあんたが死ぬよ?』



『とにかく手を離せ。』



血液独特の生臭さが鼻をかすめる。



『アキ…。俺はお前を死なせない。』



小刻みに震えながら
あたしの方へ一歩ずつ歩み寄り、



次第に力が入らなくなって
後ずさりしながら包丁を手放した。
音を立てて転がり落ちた包丁と
ふらふらしながらも片腕であたしを
抱きしめる郷田。