コイツの前で死ぬのは
しゃくに障るけど、
あたしはいつだって
終わる覚悟は出来てんだ…。
手首や首、腹を切ったって
すぐには死ねない。
一発で死ねる方法は、確実に
深く心臓を突き刺すのみ。
少しでもズレたら、
奇跡的に助かったりする。
そんな面倒くさいことは
ゴメンだ。
『言ったはずだ。死んだら全て終わり
だって。アキ、本当にそれでいいの
か?』
『なに?また説得するつもり?』
眉を上げて挑発する。
『お前はまだ、知らないことが多すぎ
る。生きてなきゃ見れないこと、感
じれないことがたくさんあるんだぞ。
躍起になるなよ。』
『煩いよ。所詮キレイ事ばっか言って
るだけの偽善者だな、あんたも。あ、
死んだあたしの躰で抜いたりすんな
よ?気持ち悪いから。』
『アキ。お前には生きる権利があるん
だ。それを俺が証明してみせるから
もう自分を傷付けるなよ。俺の言い
方か悪かったなら謝るから。すまな
い。この通りだ。』
腰を曲げて頭を下げる郷田に
苛立ちは収まらなかった。
あんたに謝られても
何の得にもならないじゃない……。

