『どうせこれから先、使うことも
 ないだろうって思っていた金な
 んだ。豪遊する気にもなれない
 しね。だけどお前に逢って変わ
 ったよ。』



まばたきした後の真っすぐな視線。
あたしはあとどれくらい、
この瞳に息を潜めるんだろう。



『アキ。この金はお前のために使う
 よ。そう決めたんだ。』



『え…?』



今までで一番気の抜けた
マヌケな返事だったと思う。



『キレイにドレスアップして、身な
 りも整えて、美味しいモノを食べ
 て、遊んで暮らせばいいさ。散々
 不幸な道歩いて来たんだろう?
 後は笑って過ごそうぜ。』



二次元の世界に思えた。
あたし、夢でも見てるんだろうか。
どこまで本気なのかもわからない
声に少しずつ怒りがこみ上げる。



不幸な道…?
同情してんの?
ふざけんな!



『あんた…あたしの何がわかるの…?
 知ったような口きかないで!あんた
 の思う不幸って何よ!親に捨てられ
 たこと?薬やってること?躰売って
 ることかよ!!』



頭の中でプチンと何かが切れた。