背筋がゾクッとした。
素の表情で言わないでよ。
あたしは…モノじゃない。



『あたしは買えないよ。勘違いして
 んじゃない?コレで一晩相手する
 だけって言ったでしょう?ただし
 気分が乗ればの話。』



真に受けてバカじゃないの?
どんな感覚してんのよ。
しかもあんたなんか相手に
しないし。



『やれやれ。からかわれたのか。』



アタッシュケースの上に腰を
下ろした。



あたしを買うって……
どういうこと?
冗談じゃないわ。



『俺のこと、まだ信用出来ないの?』



『…当たり前でしょ。一体何なの!?
 見ず知らずのあたしをいきなり拉致
 るわ、そんな大金突然やるだなんて
 普通有り得ないでしょ。』



普通の感覚なんかあたしだって
よくわからないけど、
今までだって何らかのリスクを
伴って金を手に入れてきたんだ。



薬でたぶらかすようになってからは
躰を売ることはなくなったけど。