『言っとくけどちゃんと働いて
 稼いだ金だぜ。どっかからもぎ
 取ってきた汚い金じゃないから
 な。』



そんなことどうでもいいよ。
まずこんな大金を
現金で用意出来ることに
ドン引きしてんだよ。



なに簡単に出してんの?
なにを考えてるの?



アタッシュケースごとあたしに
突き出す郷田に素で首を振る。



『アキ…?コレが欲しいんじゃない
 のか?1億出せばお前を買えるん
 だろう?だったらコレでお前を
 買うよ。』



開いた口が塞がらない。
本気で言ってるの?
頭イカレてる?
世間ではこうして、
人間の売買は行われているのか。



『目的は何なの…?あたしを買う…
 だけじゃないでしょう?』



色をなくした冷たい瞳。
そこにぼんやりと映る立ち尽くした
ままのあたし。



『逆にアキは何が欲しいの?金か?
 自由か?』



『話そらさないで。』



『じゃあどうすればお前を手に入れ
 れる?俺はこれから先のお前の人
 生を買いたいだけだ。』