『じゃあいくら出せばその気に
なってくれんの?』
あたしの長い髪の毛先をくるくると
いじりながら躰は離れない。
『……1億出してくれたら一晩だけ
付き合うわ。』
そう言うと郷田は口角を上げて
微笑んだ。
『ったく。高い買い物だ。』
頭をかきながらどこかへ
消えたかと思いきや
ガラガラと鈍い音をたてて
大きなアタッシュケースを
引いて現れた。
キョトンとするあたしの目の前で
アタッシュケースを開ける。
まさかとは思ったが、
ぎっしりと詰まった札束に
生唾を飲み込んだ。
『ウソ……。』
思わずこぼれた言葉に郷田は
前髪をかき分ける。
『ちょうど1億ね。』
青ざめたまま立ち尽くすしかない
あたし。
『あんた…何者なの…?』

