腕を掴んでいたその手は
頬へと移る。
動けないのはこの視線と
この躰。
どうして突然なの…。
どうして簡単にあたしの
心に触れてくるの…。
どうしてあたしは
この手をふりほどけないの…。
その瞳が、
あたしの全てを止めてしまう。
吸い込まれてく。
泣いていいんだ。
ううん、もう泣かない。
『あんたの前では泣かない。』
強がってみせても
余裕の笑みを浮かべて
躰を引き寄せられる。
『はいはい。そういうことにして
おこうな。』
ギュッとされた後に
頭を撫でられる、
いつものパターンだ。
『泣いた後は温かいスープでも
飲もうか。』
そう言って
あたしの手を引いて部屋を出る。
もう手を振り解く気力もない。
不思議な感覚に陥ってる。
少し襟足の長い後ろ姿。
細い腕なのに力強い。
だるそうにゆっくり歩く。

