『オイ。』



真後ろから男の声がして
振り返る。



黒っぽいスーツに長めの髪。
若い男。
ジッとあたしを見上げてる。



『ダレ?あんた。』



冷ややかな視線を浴びせると
フッと笑った。



『まさか自殺でもするつもりか?』



少しこもったような太い声。
表情ひとつ変えずにあたしを
見据える瞳。



横に流れた前髪が顔に影を
作ってる。



桟橋の手前。
手すりに立つあたし。
このまま後ろに倒れたら
間違いなく川へ落ちる。



『自殺か…それもいいね。』



自嘲気味に笑うと
瞳を閉じた。
生ぬるい風が真横を
吹き抜ける。