ある日の夜。
ミホはあたしに暗号を送ってきた。
2人だけが解っているサイン。
“脱走しよう”
ニヤリと笑うミホの目は
本気だった。
2人の間にウソはない。
いつだって一緒に居たし、
逆らうこともない。
YESと答えなくても
あたしの答えをミホは知ってるの。
それ相応の主従関係は
成り立っていたからね。
いつまでもこんな場所に
居ても何も変わらないし、
腐っていくだけの自分を
見続けるのも苦痛だった。
処方される安定剤も仮の名で、
本当は得体の知れない薬を
毎日飲まされてるのかもしれない。
そう思って、
いつもトイレで口に指を
突っ込んで吐いてた。
毎日が窮屈で居場所なんてない。
異常者である以上、
世間からも認めてもらえない。
光が当たる場所なんてない。
だからそれを隠して生きるしか
残された道なんてないの。
別に狡くなんかないよ。
恥じることもない。
そうやって生きてくことしか
出来ないだけ。
不条理な世の中なんだから
それに従ってやろうじゃない。
殻を割って飛び出した世界は、
甘い蜜があちこちに
溢れ出していた。

