灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~




『人は何度だって生まれ変われる。
 遅過ぎるなんてことはないんだぜ。』



そんな風に言われ、
どうリアクションを取れば
いいのかわからなかった。
数分前とは180度違う自分に
違和感だけが浮き立ってる。



その後も普段着何着か
試着を重ね、結局、
郷田好みに仕立て上げられ
その全てがカード払いされた。



2ケタ余裕で超えてるし…
一括払いってコイツどんだけの
金持ち!?



『郷田様、例のモノもフロントまで
 ご用意出来ました。』



スタッフがそう言うと
郷田は軽く会釈してあたしに
『帰るぞ』と言った。



大きな紙袋2つを片手に
少し前を歩く。
エレベーターを降りてからは
並んで歩き、
もう片方の手はあたしの
背に添えられた。



『悪い虫がついたら困る。』



訳の分からないことを呟いて
フロントへ向かう。
その途中、
やたら振り返る人々の群れ。
思わず下を向いた。
自分の存在が目立ってしまうのは
正直困る。



『大丈夫だよ。ここでアキを知る
 者は一人も居ないさ。』



郷田の言葉に素直に頷けない自分。
いつ何処で誰に見られているかは
把握しきれない。
もうすでにあの組織は
動き始めているかもしれないのに
……………。