部屋に戻り、昨日出された服に
袖を通しリビングに戻る。



白シャツに黒っぽい細身スーツ、
ノーネクタイの彼は爽やかに
『じゃあ行こう』と車のキーを
ポケットに入れたんだ。



出逢った頃と同じ服装に
身を包んだ彼は、
どこも変わったところはない。
いつの間にか額のガーゼも取られ、
口元の傷も目立たなくなっていた。



地下に降りてみると
見たこともない外車や輸入車で
駐車場を占領していた。



『これ、全部あんたの……?』



『ん?ああ、半分は親父さんが残して
 くれたモンだけど。今日は荷物にな
 りそうだからこっちな。』



そう言って大きい四駆系のハマーを
指差した。



乗ろうとしたら
『運転するの?』って。
左ハンドルかよ!



右側に乗り込むと
クックと笑いをこらえながら
エンジンをふかす様に
苛立ちを覚える。



大きめのグラサンを手渡され
『顔、見られたらヤバいだろ』
って意外にも気が利くヤツ。
『ま、俺と一緒なら怖いモンなし
 だけどな』って自信過剰な
ところはやっぱりしゃくに障る。