俺の中でまた時間が止まる。
深くかぶった帽子の先に捉えた姿。
見間違えるはずがない。
桜の木の下で出逢った時も、
長い髪は風に揺れていた。
隣でケタケタ笑う金髪の子に
微笑みながら腕を絡ませ通り過ぎ
ていく。
ゆら………だいぶ痩せたな。
冷たい視線は変わらないけど
少しだけ笑ってた。
二人はそのままトイレに向かうが、
看護師に止められ、
服の上からポケット等点検されて
いる。
『触ってんじゃねーよ!』と金髪の
子が反抗しだした。
警備員に壁側で取り押さえられ
もがいてる。
隣のゆらはおとなしく口を開けて
看護師に見せていた。
『トイレくらい自由にさせろよ!
このイカレ野郎!』
罵声を浴びせるのは金髪の子ばかりで
ゆらはそれを時に無表情で見てたり
時に笑ったりしてる。
フッと笑う横顔がどこか遠い瞳を
していて、胸の奥が疼いた。

