そそくさと手を動かし、
先を急いだ。
ひとつ、ひとつ。
距離は縮まっていく。



バタバタと医師や看護師が出入り
する中、何事もなかったかのように
他の患者は部屋から出てくる。



ナースステーションの看護師たちも
目の色を変えて凝視している。



その時。
ガシャン!とガラスの割れる音がした。
奥の部屋から聞こえて顔を上げる。



どうやらグラスが壁に当たって
割れたようだ。



『キャハハハ!』と笑う女の声。
一人ではない。
お腹を抱えながら笑う二つの影。



一瞬でフロアに緊張感が走る。
高鳴る鼓動を抑え、顔を伏せた。



『マジ有り得ないって!アハハ…!』



肩を組みながらフラフラした足取りで
若い女が二人出てきた。
一人は金髪のショートでろれつが
回ってない。
もう一人は茶髪のロングストレートで…



『右側が彼女です。』



すれ違いざまに探偵は耳打ちしてきた。
言われなくてもすぐに分かった。