新人のフリをして、
怪しまれないように作業の説明を
受けながら施設の中に
足を踏み入れた。
エレベーターに乗り、最上階へ。
監視カメラを意識して無言を貫く。
扉が開いてすぐ目に入ったのは
病院などにあるナースステーション
だった。
『失礼します。清掃に来ました。
よろしくお願いします。』
白々しく声をかけ、頭を下げる。
目だけはこちらに向くものの、
挨拶もない廃れた雰囲気だ。
誰一人返事はない。
白一色で統一されたはずの壁も
誰かの落書きや食べこぼし、
うっすら血のような痕が付着して
いて汚れている。
潜入する前に色々と教わった。
“最上階だけはほぼ毎日のように清掃員
が派遣されています。
監視だけで手一杯なんでしょう。”
確かに汚い。
長く続く廊下を挟んで並ぶ部屋。
どこからともなくうめき声や
話し声などが聞こえる。

