灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~




メガネの奥から見据えている
その先にまだ策があると言うのなら、
俺は間違いなく従うだろう。



一日も早く、逢わなければならない。



『待てないのなら……潜入しますか?』



想定外の言葉に息をのむ。



『で…出来るのか…?』



『もちろん可能です。全て私に従って
 頂ければ。』



本名は伏せて
極秘潜入出来ると言う。
でも一体どうやって…?



予め手渡された作業服と作業帽、
名札。
「田所 裕一」という偽名まで
用意されていた。



『バレてはいけませんので深く帽子
 を被り、猫背気味でお願いします。
 後は入ってから指示しますので。』



灰色の作業服に身を包み、
清掃作業員として潜入する。
作業用具を乗せたカートを押しながら
裏口受付で名前を記入し、
ゲートをくぐる。



数週間前から清掃作業員として
出入りしていたと言う。
警備を甘くするための策だった。