二人きりで話した喫茶店。
きちんと分与された金額はすでに
俺の口座に振り込まれて
通帳を手渡される。
寡黙な叔父さんは、
俺の返事を待ちながら二本目の
煙草に手が伸びている。
カランとお冷やの氷が音をたてると
俺は堅く閉ざしていた口を開いた。
『僕も人間です。義理と人情は
わきまえているつもりです。』
その言葉に俯いていた叔父さんは
顔を上げた。
『僕には返しても返しきれない
恩があります。感謝しています。』
『じゃ、じゃあ……』
あなたたちを見殺しには出来ない。
唯一、自分の中に残された良心を
全て使い果たそう。
それで自分自身も救える気がした。
顔色が変わった叔父さんにそっと
通帳を差し戻す。
『僕にはこのお金を受け取る権利は
ありません。ですが、二つほど
条件があります。聞いてもらえ
ますか?』

