一から再スタートさせた事業が
始まってすぐのこと。
郷田グループに衝撃の事態が訪れる。



俺を引き取った義理の両親が
交通事故により突然の他界。
自分を繋ぐモノが一瞬にして
絶たれた。
所詮、他人なんだ。



冷たい視線が向けられる中、
俺を救ったのは、両親が残した
遺言書と義理父の弟だった。



その内容は、遺産分与と経営理念、
俺について記されていた。



義理父の弟にあたる叔父さんに
説明を受けた時は
流石にゾクッと身震いしたよ。
戸籍上では親子だけど
全く他人の俺に分配された遺産の
額はハンパじゃない。



わずか22歳だった俺が一生遊んで
暮らせる額だ。



『まだ誰にも伝えていないが、この
 まま逃げてくれても構わない。君
 が決めればいい。万が一そうなっ
 たとしても誰も君を責めるなと
 遺言書にも書いてあるんだ。』



叔父さんは平然とそう話した。
だけどわかってる。
俺が居なくなれば今の会社の
未来はない。
平然を装っていても、微かに
震える手を黙って見てた。