「いらない」と言われれば
そこで孤児は終わりなんだ。
大人たちの気が変わらないように
常に神経を張り巡らせて
夜も両親が眠りにつくまでは
自分は眠れなかった。
新しい生活にも少しずつ慣れてきた
のは、施設を出てちょうど一ヶ月
経った頃。
まだ頭の中に焼き付いて離れない
ゆらの泣き顔。
もう泣いてないだろうか。
心配でたまらなかった。
だから誰にも内緒で
こっそりもう一度施設を訪れたんだよ。
一目でもゆらを見たくて。
今度こそ、声をかけたくて。
そんな想いでいっぱいだったのに、
震えるほど緊張したのに、
結局逢えることはなかった。
もうすでに、ゆら自身も施設を出て
いたんだね。
誰に聞いても
詳しく教えてくれない。
完全なる監視と、手首の傷、
おそらく心に病を抱えてる。
憶測にすぎないけど、
精神面で保護されたんだと
解釈せざるを得ない。
片っ端から精神科を調べてみた。
でもそんな簡単には見つからない。
探し方もよくわからないまま、
時間だけが無謀に過ぎる。
心の中にモヤモヤが取れないまま、
俺は一度諦めた。

