ふわふわと眠りから覚める朝。
誰かの怒鳴り声らしき音で
目が覚めた。



部屋を出て廊下に出てみると、
郷田の部屋のドアが半分開いている。



手の痛みでのた打ち回ってるのかと
思い、早足で部屋に近付いてみると
どうやらそんな空気ではないと感じた。



誰かと携帯で話している様子。



『馬鹿やろう!お前何考えてんだ?
 五千万だぞ?そんな契約逃すのか!
 …ったくふざけるな。先方には俺
 から電話入れておく。今から向か
 うから書類揃えて待ってろ。』



郷田はそれだけ言って乱暴に
携帯を切った。
大きな溜め息をついて
上着に手を伸ばす。



部屋を出てきたところで
あたしと目が合った。



『あ…悪い。起こしちゃったか。』



器用に上着に袖を通しながら
顔を歪めた。



『郷田……あんた何してんの?』



『え?何が?ていうか悪いな。
 ちょっと野暮用で急いでるんだ。
 すぐに戻るから大人しく待って
 てくれよな。』



聞きたいことがいくつもあったのに、
前髪にキスを落とされたら何も
言えなくなる。