灰色の瞳~例えば異常者だとしたら~




あたしは何も答えずに無言で
シャツを着せて腕を通した。
前ボタンを手早く留めていく。



これ以上の至近距離は
危険信号が点滅してしまう。



だけど、自由のきく片手で
あたしの手は簡単に止められ、
再び見つめ合う。



『アキ…?約束して…?何があっても
 俺からは離れないって。』



うるさいほどに心臓がざわついて
上手くリアクションが取れなかった。



『な…んで?』



もうこの手を払いのけれない。
 


グッと引っ張られて、力強く
抱きしめられた。



唇が郷田の首もとにくっついて
厚い胸板があたしを締め付ける。



トクン…トクン…。
心地良い心音が伝わってくる。