『今更嘘付いてどうする?今まで
 言ったことだって全て本心だよ。』



当たり前と言わんばかりに
堂々とした態度。
他人の嘘なんて一瞬で見破れる
あたしだけど、
まだ郷田に関しては
いつどのタイミングで信用して
いいのか検討もつかない。



この激しく揺れる鼓動が全てを
邪魔してる。
冷静になれない。



自分の身の危険を犯してでも
あたしを救った郷田の言葉が
こだまする。



ただ包帯をぐるぐる巻きにしただけの
右手を見ると、胸が締め付けられる。



『少し、腫れてる…。』



むくんでいると言うべきか。
片方の手と比べて指の太さが違う。



『大丈夫だよ。大したことない。
 こんなのかすり傷だ。』



その笑顔からは
いつもの郷田らしさが見える。
無理はしてると思う。
あれだけ深く切っておいて、
痛くないわけがない。



そっとその手に触れた瞬間。



熱いモノでも触ったかのように
ビクッと躰は反射的に
あたしの手をはねのけた。
顔だって歪んでる。