ゴシゴシと磨いたキッチンの床は
元通りになった。
血で染まったタオルもゴミ箱へ
捨てた。
その後は異常なほどに手を
洗ってしまう。
まだ血の匂いが取れていない
気がして、
何度もハンドソープをつけて
洗い流す。
こんなことしても、
記憶と感触は消えてくれないのに…。
微かな記憶を頼りに米を洗い、
火にかける。
極めて簡単なお粥を作ってみた。
昔、母親と作ったことがある
お粥だけど。
まだ寝ている郷田の元に行くと
ゆっくりと瞼が開いた。
『アキ…?』
寝ぼけ眼であたしを呼ぶ郷田は
子供のようだった。
だけど、
広いベットの上で胸元が少し
開いたYシャツ姿は
どこから見ても色っぽく見えてしまう。

