『嫌だと言ったら?』
最後の最後でとんだ悪あがき。
死ぬことに何の恐怖もないのに。
目の前に居るこの男の
ポーカーフェイスぶりが
気にくわなかった。
『力付くで降ろすまでだ。』
自信に満ちた表情。
少しだけ口角が上がり
笑った気がした。
『ふっ……ふははは。』
糸が切れたように笑い出すあたし。
可笑しいところなんて
ひとつもないけど
最期は笑っていたい、とか
ガラにないことを思ってしまう。
笑い声が途切れると
見下ろす男に微笑んで、
ゆっくりと躰の力を抜いた。
『──あっ!』
男の声が聞こえて、
あたしの記憶はプツリと切れた。
落ちていく感覚と
冷たい水の感触を最期に───

